●一家に一台、マイクロ原子炉の時代が目前?
1.(1)マイクロ原子炉の開発競争が熱を帯びている。
マイクロ原子炉は、原子力潜水艦や戦士力空母の電力源として軍事目的て開発が進められていたことに端を発する。
(2)マイクロ原子炉は
既存の原子力発電と同様に、
石炭火力発電や天然ガス火力発電と異なり、
温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を排出しない上、
安全性や経済性の面でも優れているとされる。
太陽光発電などの再生可能エネルギーだけでは
温室効果ガスの排出削減に限界があるとされる中、
「脱炭素化」の切り札になると期待されており、
2021年4月16日に予定される日米首脳会談でも開発協力がテーマとなる見通しだ。
2.マイクロ原子炉は、
小型モジュール炉(SMR=スモール・モジュラー・リアクター)とも呼ばれる。
既存の原発で主流の軽水炉は大型化が進み、
1基当たりの出力が100万キロワット以上が主流なのに対し、
数万~数十万キロワットと小さいが、
原子炉の容積に対する表面積が大きく、
原子炉を冷却しやすいのが特徴だ。
3.
(1)マイクロ原子炉はトレーラーに搭載できる程度のユニットであって、
主要機器を事前に工場で製造してから現地で据え付けるため、
初期投資抑制や工期短縮が可能。
建設費が1兆円を超えることも珍しくない軽水炉に対し、
数分の一で済む可能性がある。
事故時に、
原子炉だけを隔離して移動できるという最大の特徴に加えて、
安定的に発電できるため、
天候に発電量が左右されがちな再生可能エネルギーを補うと期待されるほか、
比較的狭い地域ごとに発電所が散在する形が想定されており、
万一の事故の影響も少ないとされる。
隔離は、例えば、ヘリコプターやコンテナ車輛等で実現できる。
(2)実用化に向けて、日本を含む各国の企業が開発に取り組んでいる。
日立製作所は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)
との合弁会社「日立GEニュークリア・エナジー」(茨城県日立市)で
出力30万キロワットのマイクロ原子炉を開発中。
北米で2030年ごろの実用化を目指している。
「異常時でも外部電源と運転操作を必要とせずに炉心を冷却できる」(日立)のが特徴で、
原子炉を地中に埋めるため、
より冷やしやすく、
テロからの防護にも優れているという。
4.(1) マイクロ原子炉には、
国内電力会社も関心を寄せている。
関西電力は2月に発表した
「ゼロカーボンビジョン2050」で
マイクロ原子炉の導入の検討を盛り込むなど、
脱炭素に向けた有力技術ととらえている。
(2)脱炭素化は喫緊の課題となっているが、その実現は容易ではない。
再生可能エネルギーの導入が順調に進んだとしても、
2050年時点の電源構成に占める割合は日本を含む多くの国で50~60%にしかならないとみられているからだ。
(3)運転時にCO2を排出しない原発を組み合わせれば実現に近づくが、
11年の東京電力福島第1原発事故もあり、
原発への不信感は薄れていない。
同事故を機に、
より厳格な安全対策が求められるようになった結果、
軽水炉の建設コストも以前よりはるかに高くなっている。
(4)マイクロ原子炉に注目が集まるのは、
軽水炉より安全性が高く、
建設コストも安いため、
既存原発が抱える問題を解決する可能性を秘めているからだ。
原発への不信感の払拭や、
使用済み核燃料の処分方法確立といった課題はあるが、
日本政府はマイクロ原子炉の海外プロジェクトに加わる日本企業を
積極的に支援していく方針だ。
米国カリフォルニア工科大学客員教授 Prof.PhD.& Dr 神室

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